【比較表】Wi-Fi7とは?いつから利用できる?4つの特徴や旧規格との違い 3分でわかる!無線LANミニ知識
自社の通信環境に課題を抱えている企業で待望されているのがWi-Fi 7です。特に通信速度の高速化や同時接続台数の増加、低遅延化といったWi-Fi 7の主要な特徴は、ビジネスの現場に大きな変化をもたらす可能性があります。
そこで今回は、Wi-Fi 7の概要や利用開始のタイミング、現行規格との違い、Wi-Fi 7の速度が速くなった理由など具体的な特徴、Wi-Fi 7の活用シーンについて解説します。企業のご担当者さまはぜひ参考にしてください。
Wi-Fi7とは?
業界・業種を問わずあらゆるビジネスシーンでインターネットを利用する現代では、Wi-Fiの通信速度や同時接続台数などが重要な意味を持ちます。そこで期待されているのがWi-Fi7です。最初にWi-Fi7の概要について解説します。
Wi-Fi7は次世代の無線LAN規格
Wi-Fi 7(正式名称:IEEE802.11be Extremely High Throughput)は、Wi-Fi 6/6Eの後継となる次世代の無線LAN規格です。16×16 MIMOとMU-MIMO技術により、理論値で最大46Gbpsという超高速通信を実現し、データの処理や伝送にかかる遅延時間を抑えることが可能です。
また、メッシュネットワークの構築も容易になり、チャネルの効率的な利用によりスペクトル効率が向上しました。その他にも、MLO(Multi-Link Operation)技術の採用により、複数の周波数帯を同時に利用して安定した通信を実現できることも特徴です。2023年12月末には総務省が電波法施行規則を改正し、日本国内でのWi-Fi 7の利用が正式に許可されました。
この技術革新は、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させ、IoTデバイスの普及やクラウドサービスの活用、遠隔作業の効率化など、ビジネスの在り方そのものを変革する可能性を秘めています。スマートファクトリーやハイブリッドワークなど、次世代のビジネス環境を支える重要な技術基盤となることが期待されています。
Wi-Fi7はいつから利用できる?
Wi-Fi 7を利用するためには、Wi-Fi 7対応の端末(スマートフォンやPC)とWi-Fi 7対応ルーターもしくはAPの両方が必要です。2024年上旬から各メーカーが対応製品の販売を開始していますが、本格的な普及にはまだ時間がかかると予想されます。
これは、前世代のWi-Fi 6Eでも経験した道筋です。Wi-Fi 6Eは2020年1月に規格が発表されたものの、日本での認可には2年半以上の期間を要し、2024年1月時点でも国内での普及は限定的な状況です。Wi-Fi 7が普及してWi-Fi規格のメインになっていくのは、2025年〜2026年頃と予想されています。
ただし、世界の主要テクノロジー企業が相次いでWi-Fi 7のデモンストレーションを実施しており、技術の成熟度は着実に高まっています。導入を検討している企業は、各メーカーの製品リリース情報や実証実験の結果など、最新の動向をチェックすることをお勧めします。
Wi-Fi7と旧規格の違い
Wi-Fi 7は、前世代のWi-Fi 6/6Eと比較して技術的な革新を遂げています。最大の特徴は通信速度で、理論値では46Gbpsを実現し、Wi-Fi 6/6Eの9.6Gbpsと比較して約4.8倍の高速化を達成しました。この驚異的な速度向上を支えているのが、周波数帯域の拡大(2.4GHz/5GHz/6GHz)とチャンネル幅の拡張(最大320MHz)です。さらに、変調方式も進化し、4096-QAMの採用により1度に送れるデータ量が増加しました。
また、新機能のMLO(Multi-Link Operation)の実装により、複数の周波数帯を同時に利用できるようになりました。これにより、通信の安定性が大幅に向上し、電波干渉の影響も最小限に抑えられます。例えば、ある周波数帯で干渉が発生しても、他の周波数帯に自動的に切り替えることで、途切れることのない通信を実現できます。なお、MLOとは、2.4GHz、5GHz、6GHzの異なる周波数帯を同時に使用できる技術です。これにより、通信速度の向上と安定性の確保を実現します。
同時接続台数も、フルノシステムズのACERA EW770は理論上1280台(6GHz, 5GHz帯が512台、2.4GHz帯が256台)の同時接続ができ、IoTデバイスの増加に対応できる拡張性を確保しています。この拡張により、スマートホームやオフィスなど、多数のデバイスが同時に接続する環境でも、安定した通信品質を維持できるようになりました。
その他にも、IEEE802.11bから続く技術革新により、Wi-Fi 7では複数のストリームを効率的に処理することが可能になっています。また、UL(アップリンク)通信のパフォーマンスも大幅に向上し、より安定した双方向通信が実現しています。セキュリティ面でも強化が図られ、AIによる不正アクセスの検知も可能になった点も特徴と言えるでしょう。
旧規格との詳細な比較に関しては、下記の表でご確認ください。
<Wi-Fi7と旧規格の違い>
Wi-Fi7 | Wi-Fi6E | Wi-Fi6 | Wi-Fi5 | |
リリース年 | 2024年(未定) | 2022年 | 2019年 | 2013年 |
IEEE規格 | 802.11be | 802.11ax | 802.11ax | 802.11ac |
最大通信速度 | 46Gbps | 9.6Gbps | 9.6Gbps | 6.9Gbps |
周波数帯 | 2.4/5/6GHz | 2.4/5/6GHz | 2.4/5GHz | 5GHz |
チャンネル幅 | 最大
320MHz
|
20,40,80, 80+80,160MHz | 20,40,80, 80+80,160MHz | 20,40,80, 80+80,160MHz |
変調方式 | 4096-QAM
OFDMA
|
1024-QAM
OFDMA
|
1024-QAM OFDMA | 256-QAM OFDM |
チャンネル幅とは周波数の帯域幅のことで、最高周波数と最低周波数の差を表しています。チャンネル幅が広い(=数値が大きい)と一度に転送できるデータ量が増えるため、通信速度の向上が期待できます。
また、変調方式とはデジタルデータを電波として伝送する際に、最適な電気信号へと変換する仕組みのことです。Wi-Fi7では4096-QAMの変調技術が採用されており、伝送速度やストリーミング体験の向上が見込まれています。
Wi-Fi 7の速度が速くなった理由
Wi-Fi 7が実現した高速通信には、複数の革新的な技術が関係しています。ここでは、速度向上を支える4つの重要な技術的進化について解説します。
1度に送れるデータ量が増えた
Wi-Fi 7では、チャンネル幅が従来の160MHzから320MHzへと拡大し、1度に送れるデータ量が大幅に増加しました。この進化を物流に例えると、同じサイズの荷物を運ぶトラックの積載容量が増えたようなものです。旧規格が1台のトラックで3箱の荷物を運べるとすれば、Wi-Fi 7では6箱を一度に運べるようになったイメージです。荷物(データ)の大きさや重さは変わりませんが、1度の配送(通信)で運べる量が倍増したことで、結果的に約2倍の速度向上を実現しています。
この技術革新により、4K/8K動画のストリーミングや大容量ファイルの転送など、データ量の多い通信でも快適な速度を維持できるようになりました。特に6GHz帯での通信において、この広帯域を活かした高速データ転送が可能です。例えば、大規模なデータバックアップやクラウドストレージとの同期、高解像度のビデオ会議など、大容量データの送受信が必要な場面で、作業効率の大幅な向上が期待できます。
さらに、チャンネル幅の拡大は、複数のデバイスが同時に通信を行う場合でも、各デバイスに十分な帯域を割り当てることを可能にしました。これにより、オフィスやご家庭など、多数のデバイスが接続する環境でも、安定した高速通信を実現できます。
データの通り道が増えた
Wi-Fi 7では、新たに導入されたMLO(Multi-Link Operation)技術により、複数の周波数帯を同時に利用できるようになりました。この進化を道路に例えると分かりやすいでしょう。旧規格では、2.4GHz、5GHz、6GHzのいずれか1本の道路しか使えませんでしたが、Wi-Fi 7では2.4GHz、5GHz、6GHzという3本の道路を同時に利用できるようになりました。
これは、データを運ぶトラックが3本の道路を同時に走行できるようになったイメージです。例えば、ある道路(周波数帯)で渋滞(干渉)が発生しても、他の道路にトラックを振り分けることで、効率的なデータ転送を維持できます。この技術により、通信の安定性が大幅に向上し、電波干渉による速度低下のリスクも最小限に抑えられるようになりました。
さらに、それぞれの道路で独立したデータ転送が可能なため、複数のデバイスが同時に通信を行う場合でも、帯域の混雑を避けることができます。これは、オフィスなどの多数のデバイスが接続する環境で特に威力を発揮し、安定した通信品質の維持に貢献します。
遅延時間が減少した
Wi-Fi 7では、MLO(Multi-Link Operation)技術の採用により、通信の遅延時間が劇的に減少しました。これは、2.4GHz、5GHz、6GHzの3つの周波数帯を同時に使用してデータを送信できるようになったことが大きな要因です。同じデータを複数の経路で同時に送ることで、通信の信頼性が大幅に向上しています。
例えば、ある周波数帯で電波干渉などによる通信エラーが発生しても、他の周波数帯でデータが正常に届く可能性が高くなります。これにより、データの再送信が必要となるケースが大幅に減少し、結果としてレイテンシー(遅延時間)を低減することに成功しました。
この低遅延化は、ビジネスシーンでもプライベートでも大きなメリットをもたらします。例えば、オンラインゲームでのタイムラグの解消や、ビデオ会議での音声・映像の遅延低減、IoTデバイスのリアルタイム制御など、即時性が求められる様々な用途で効果を発揮します。特に、工場の自動制御システムや遠隔医療など、ミリ秒単位の遅延が重要な意味を持つ専門的な領域でも、十分な性能を提供できる可能性がある技術として注目されています。
データを送る時の通信効率が向上した
Wi-Fi 7では、データの変調方式が大きく進化しました。変調方式とは、デジタルデータを電波(アナログ信号)に変換して送信するための技術です。Wi-Fi 7では、旧規格の1024-QAM(10ビット)から4096-QAM(12ビット)へと進化したことで、1つの信号に乗せられるデータ量が約1.2倍に増加しました。
この技術革新により、データを電波に変換する際の処理効率が約1.2倍に向上し、より多くの情報を一度に送信できるようになりました。例えば、大容量の画像や動画ファイルを送信する場合、より少ない信号でより多くのデータを伝送できるため、通信時間の短縮につながります。
ただし、この高度な変調方式には一つ注意点があります。ルーターやアクセスポイントから離れた場所では、電波が弱まることで効果が十分に発揮されにくい傾向があります。そのため、オフィスや家庭でWi-Fi 7の性能を最大限に活用するためには、適切な場所にルーターやアクセスポイントを設置し、電波強度を考慮した配置を検討する必要があるでしょう。特に、高速通信が必要なデバイスは、できるだけルーターやアクセスポイントの近くに配置することをお勧めします。
Wi-Fi 7の特徴
Wi-Fi 7には、データ通信速度の向上や同時接続台数の拡大などさまざまな特徴があります。こちらではそれぞれの特徴を深掘りします。
最大通信速度は46Gbps
Wi-Fi 7のスループットは、最大46Gbpsまで高速化される予定です。スループットとは、通信回線の速度やコンピュータシステムが一定時間内に処理できるデータ量を表す単語です。この数値が大きいほど通信回線の速度が速く、コンピュータシステムの処理能力が高いことを意味します。
Wi-Fi 7の最大46Gbpsという数値は、Wi-Fi6やWi-Fi6Eの最大9.6Gbpsと比べると4倍以上の値であり、数値上は大幅な高速化を実現しています。あくまでも理論値のため、実際に46Gbpsが出る可能性は低いですが、通信速度の向上はWi-Fi 7における大きな特徴です。
また、Wi-Fi 7の高速通信は消費者がデータサイズの大きいコンテンツをスムーズに体験する際にも役立ちます。例えば、16K動画のストリーミングや高精細なVR・ARの高速伝送などに活用することで、ユーザーのオンライン体験を向上させるでしょう。
同時接続できる台数は最大16台
Wi-Fi 7ではマルチリンクオペレーションの技術が導入され、従来の規格と比較して同時接続できる台数が増える点も特徴です。マルチリンクオペレーションとは、接続時における複数の周波数帯の同時利用をサポートする機能のことで、「Multi-Link Operation」を略してMLOと呼ばれます。
具体的には、Wi-Fi6やWi-Fi6Eでは最大8台まで同時接続できましたが、Wi-Fi 7では最大16台まで拡大できる見込みです。ビジネスシーンでは、パソコンやスマホ、複合機などさまざまな機器をインターネットに接続する必要があり、Wi-Fi 7の恩恵は大きいといえるでしょう。
レイテンシー(遅延時間)が100倍近く減少
Wi-Fi 7には、レイテンシーを一定化する「Deterministic Latency」の技術が用いられています。これにより遅延の低減が期待されており、Wi-Fi6やWi-Fi6Eと比較すると、ワーストケース(最悪の場合)のレイテンシーが100倍近く改善される見込みです。条件次第では、有線LANに近い快適さで通信できる可能性があります。AR・VRアプリケーションや、クラウド・オンラインゲームなどの利用環境の改善も期待できるでしょう。
連続していない周波数を利用可能
Wi-Fi 7には、連続していない周波数を利用できるようにする「Multi-RU Puncturing」の技術が用いられています。Wi-Fi 7で使用できる周波数帯は、2.4GHz、5GHz、6GHzの3種類があります。このうち6GHzの最大帯域幅は320MHzで、Wi-Fi6Eの160MHzよりも広いのが特徴です。帯域幅が広くなることで送れるデータの量が従来よりも多くなり、通信速度の高速化につながります。
通信が安定的
Wi-Fi 7では、MLO技術により2.4GHz、5GHz、6GHzの3つの周波数帯で同時通信できるため、通信の安定性が大幅に向上しました。例えば、電子レンジなどの家電から発生する2.4GHz帯の干渉波により通信が不安定になるケースでも、自動的に5GHzや6GHz帯に切り替えることで、途切れることのない通信を維持できます。
また、データの遅延時間が大幅に減少したことも、安定した通信の実現に貢献しています。複数の周波数帯を同時に利用できることと、低遅延性能の向上により、ビデオ会議やオンラインゲームなど、リアルタイム性が求められるアプリケーションでも、安定した通信環境を実現できます。
Wi-Fi 7の活用シーン
Wi-Fi 7は、その高速性と安定性により、ビジネスからプライベートまで幅広い場面で活用できます。具体的な利用シーンを見ていきましょう。
ビジネスシーン
Wi-Fi 7の高速・低遅延な通信により、ビジネスにおけるネットワーク関連の課題を大きく改善できます。オンライン会議では、高解像度の映像と音声がスムーズに送受信され、安定した通信環境により自然なコミュニケーションが可能になります。
また、オフィスやテレワーク環境での大容量データの送受信も可能で、クラウドサービスの利用も役立つでしょう。医療現場では高精細な診断画像の共有が、教育現場では質の高いオンライン授業が実現できます。
さらに、産業分野ではIoTデバイスやロボットのリアルタイム制御が可能となり、工場の生産ラインの効率化や自動化を促進します。特に製造現場では、多数のセンサーやカメラからのデータをリアルタイムで収集・分析し、生産プロセスの最適化が期待できます。
プライベートシーン
Wi-Fi 7は、日常生活をより快適で効率的なものに変える可能性を秘めています。オンラインゲームでは、ラグ(遅延)が大幅に減少し、高画質でのストレスフリーなプレイが楽しめます。また、4K・8Kの動画配信サービスやAR/VR動画も、スムーズに視聴できるようになるでしょう。スマートホームの運用では、照明、家電、防犯カメラなど、多数のIoT機器を同時に安定して接続できるため、より快適な住環境を実現できます。
さらに、株取引やFXなどのオンライントレードでは、より正確なリアルタイム取引が実現する可能性を秘めており、タイムラグによる機会損失のリスクを軽減できます。趣味から投資まで、様々な生活シーンでWi-Fi 7の恩恵を受けることができます。
Wi-Fi 7の仕組みや特徴を理解して自社の通信環境の整備に役立てよう
Wi-Fi 7の概要や旧規格との違い、具体的な特徴について解説しました。Wi-Fi 7は、現行のWi-Fi6やWi-Fi6Eと比較して、高速・低遅延・大容量化を実現する次世代の無線LAN規格です。日常生活はもちろん、企業のビジネスにも影響を与える可能性があるため、将来の実用化に向けて常に最新情報を収集しておきましょう。
また、Wi-Fi 7の実用化は2025年~2026年頃になる見込みですが、もし現時点で自社の通信環境に課題を抱えている場合でも、フルノシステムズの最新機種であるACERA EW770を利用することでWi-Fi 6EもしくはWi-Fi6に対応し、安定性・安全面に優れた性能環境で利用することができます。
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